生分解性バッグ - 完成までの過程とこれから -

生分解性バッグ - 完成までの過程とこれから -

2022年の夏に、OVERVIEW COFFEEでは業務用のコーヒーバッグを100%生分解性バッグに切り替えをしました。不特定多数の方の手に渡る小売り用バッグは、素材の耐久性やデザインの美しさを重視し、100%リサイクル可能な単一素材のバッグを使用しています。

対して、パートナーの店舗で使用するために大容量のコーヒー豆を梱包する業務用バッグは、各店舗のバリスタによる管理が行き届き、輸送時に丁寧な梱包をすれば小売り用バッグほど素材の耐久性を心配する必要はありません。あとは、鮮度維持のための気密性や、ガス抜きの構造がしっかりとしていれば、環境負荷の低い素材を導入しない理由はありません。

新たに導入したコーヒーバッグは、表面の素材・気密性を保つためのバリア素材が生分解性素材で構成されています。また、焙煎直後に発生するガスを抜くために、脱気技術を採用しているため、従来のようなバルブ取付は不要となりました。つまり、単一素材のため使用後はそのまま土に還すことができます。

このバッグは「ゼロ・ウェイストをコアコンセプトとして、ゴミを出さない経済循環(サーキュラーエコノミー)のある暮らし」を提案する〈530〉の代表・中村元気さんが監修のもと、〈ナカバヤシ株式会社〉によって製品化されました。

OVERVIEW COFFEEは2022年春から、バッグの利用者となるコーヒーロースターという視点から、十分に風味が保つことができるかという鮮度維持の品質テスト、作業性を含めたバッグ形状の提案、使用後のバッグ回収と循環についてのリクエストなどで関わっています。

今回の記事では、〈530〉代表の中村さんへのインタビューをもとに、生分解性バッグを製造するまでに至る背景や、プロダクトの機能、循環のデザインについてお届けします。

 

最後まで減らすことができないもの

〈530〉の代表を務める中村さんは、ゼロ・ウェイストという文脈からコーヒー業界、特にスペシャルティコーヒーを取り扱うマイクロローターと関わりを持つようになりました。当時、コーヒーショップで当たり前のようについてきたストローやリッド、これはそもそも誰しもにとって必要なものなのか、という疑問から、〈コーヒーとプラスチックのこれから〉という環境問題を考える場がスタートしました。

勉強会を続けるうちに、プラスチックを中心とした使い捨て製品を減らす活動へと発展していきました。ストローやリッドのように、必ずしも使う必要のないものは、素材を変更すること以上に、減らすことで解決できる対象だと捉えました。そうして、減らすことが難しいものを考えた時に、梱包用の資材がそれにあたると気づいたのです。

コーヒー豆の梱包材は風味を保つために高い気密性が求められます。そのために、表面の素材とは別に内側にアルミ材が使用されているケースが多いです。また、ガスを抜くためのバルブや、ジップはプラスチックが使用されているため分別をすることができません。瓶に置き換えることは配送や衛生面から現実的ではないので、コーヒーバッグの素材そのものを見直す必要があると感じました。そこから、コーヒー豆の梱包に最適な機能をもった、循環型のバッグを製作するプロジェクトがはじまりました。

 

 

 

家庭でもコンポスト可能なコーヒーバッグ

使い捨てではない循環をつくることが目的だったので、生分解性のコーヒーバッグを作ることがスタート地点となりました。通常のコーヒーバッグは気密性と遮光性を高めるために複数の素材やパーツで構成されています。そのため使用後に分別することができません。つまり役目を終えたコーヒーバッグは「燃やすゴミ」として捨てることになります。

また、生分解性素材であっても特定の環境でなければ分解が難しく、実用的ではないものも多くあります。今回、製作したバッグは家庭用コンポストで堆肥化できる実証実験まで済んでいます。後ほど触れますが、生分解性バッグを作って終わりではなく、どうやって循環させるかをテーマにしています。

製作にあたっていくつかの会社から技術的な協力を得ています。個々の技術はすでに確立されているものでしたが、それらをコーヒー用のバッグとして技術を応用することが今回の課題となりました。バッグ単体で質の高いものを作ることは難しくありませんが、実際に使用するコーヒーロースターが求める機能にチューニングすることが重要でした。

特に既存のバッグと同等のスペックは確保しなければいけないので、いくつかのロースターに協力していただき、風味維持のテストは慎重に行いました。このバッグは外側が紙、内側に気密性を保つための生分解性フィルムを使用し、さらにこの2層をつなぎあわせる圧着剤の3層で構成されています。遮光性に関しては紙の厚みで調整をしました。

コーヒーバッグ特有の機能として、ガス抜きをする必要があります。焙煎直後に発生するガスを、バッグ内から適切に抜くことでクリアな風味を保つことができると言われています。大半のバッグにはプラスチック製のバルブがつけられていますが、このバッグはパーツを付け足すことなく、〈TiMELESS®️〉という特許技術をつかっています。ヒダ状になった非常に細い管の長さを調整することで、ガスが抜ける適切な流路を設計しています。

 

 

理想的な循環をめざして

バッグが完成し、夏頃からOVERVIEW COFFEEをはじめとするいくつかのコーヒーロースターでの利用がはじまりました。小売用のバッグも製造していますが、まず業務用のバッグから動き出したのは回収のしやすさが理由です。不特定多数の方に行き渡る、小売り用バッグを回収する方法が整っていないのが現状です。家庭レベルのコンポストで堆肥化することはできますが、実際に行う人はまだ少数だと考えています。

業務用であれば、使用するロースターがハブとなって回収することが可能です。各ロースターが回収したバッグを集めて、堆肥化する流れを整えています。理想としては店舗で出るコーヒーカスを、使用済みの生分解性バッグにつめて保管し、店舗の近隣で堆肥化をすることです。ただ、東京のように農地から距離がある店舗は解決すべき課題が多いです。

現在は、養鶏場から出る鶏糞とコーヒーカスを混ぜ合わせて、悪臭を最小限まで減らした堆肥を製造する企業との提携を目指し、堆肥化、発芽実験、実際の農地での使用実験を進めています。

将来的には、コーヒーカスとコーヒーバッグが、全国のエリアごとに堆肥化されるようになれば、輸送コストやエネルギーを抑えることができる他、健康な土壌で生産された野菜が、店舗で使われるような循環が生まれることが理想です。

 

 

サブスクリプションサービスの梱包は選択性に

2021年、OVERVIEW COFFEEは「人と地球の再生」をテーマにしたイベント〈(re)generate!〉への参加や、Patagonia主催によるサーキュラリティをテーマとしたサーフツアー〈Worn Wear Surf Tour〉に帯同し、イベントを通じた環境負荷低減のためのコミュニケーションを行いました。

4月に完成した〈OVERVIEW COFFEE TRUCK〉ではストローとリッドの有料化しています。結果、2022年に提供したドリンクのうち、リッドの使用率は8.6%、ストローはわずか4.7%の使用に留まりました。また、タンブラー等のマイカップ使用率は12.1%という結果でした。コーヒートラックという、テイクアウトの営業形態でありながら、この結果は非常に高いものだと捉えています。

このように、自社で行えることは積極的にチャレンジしますが、今回のようにコーヒーバッグの切り替えは製造技術、サプライヤー、そして十分な性能があってはじめて可能となります。その意味で非常にハードルが高く、小さな変化ではあるものの大きな一歩です。この先は、回収から循環のプロセスを整え、普段から私達のコーヒーを飲んでくださっている方に、よりよいニュースをお届けしたいと思います。

最後に、次のチャレンジとしてお知らせです。サブスクリプションサービス〈MONTHLY OVERVIEW〉に限り、通常のパッケージと、生分解性バッグを使用したパッケージの2種類から選べるようになります。日々飲んでいただくサービスだからこそ、資源がセーブできるオプションとしてご用意します。今回の記事の通り、風味の鮮度に差はありません。開封後はキャニスターに入れて、ゆっくりとご賞味ください。

初回分の受付は12/31までとなります。すでに通常パッケージのMONTHLY OVERVIEWをご利用の方はマイページから変更が可能です。お問い合わせは info@overviewcoffee.jp にて承ります。

 

 

MONTHLY OVERVIEW
商品ページ | サービス詳細

2023年 1月配送分のスケジュール
受付締切 1 / 6まで
焙煎予定日 1 / 10
発送予定日 1 / 12

価格(税込み・送料無料)
100g × 3袋 - ¥2,690 1袋あたり10%お得
250g × 2袋 - ¥3,690 1袋あたり20%お得
250g × 3袋 - ¥5,540 1袋あたり25%お得

飲む頻度と量の目安
100g × 3袋(25杯相当)- 1日 1杯程度の方
250g × 2袋(40杯相当)- 1日 1杯・複数人で飲む方
250g × 3袋(60杯相当)- 1日数杯・複数人で飲む方

 

コーヒーバッグの回収はOVERVIEW COFFEEの焙煎所にて受け付けています。下記住所までお持ち込み、もしくはご郵送ください(送料はお客様ご負担となります。予めご了承ください。)今後はパートナーの店舗と連携し、回収スポットを増やしていく予定です。

受付先 〒722-2411 広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田254-2
電話番号 050-3586-0527
担当 Overview Coffee Japan サポートチーム

コーヒーバッグに関するお問い合わせ先
ナカバヤシ株式会社 : asue@nakabayashi.co.jp