(re) generate!

(re) generate!

2022年5月21日から22日にかけて、静岡県沼津市で開催された(re)generate!。このイベントでは「人と地球の再生」をテーマに、トークや、野外アクティビティ、アートエキシビジョンが行われました。参加者から出店者まで、最低限の荷物をもって会場内でテント泊ができることも特徴のひとつで、終始和やかな交流が生まれました。OVERVIEW COFFEEは、先日発表したOVERVIEW COFFEE TRUCKでマーケットに出店し、多くの方にコーヒーを飲んでいただきました。2日間で182杯のコーヒーを提供し、そのうち50杯はマイカップを持参された方に提供をしています。また、リッドの利用はわずか1回と、こちらも使い捨て資源の削減に成功しました。OVERVIEW COFFEE TRUCKは、今回のイベントに限らず、すべての営業を通してリッドとストローを有料化し、タンブラー持参の場合は割引をしています。


今回のNewsletterでは、(re)generate!の主催であり、(re)generate! MAGAZINEの編集長である千代田高史さんに、イベント開催までの経緯や、<再生>にまつわるご自身のエピソードをインタビュー形式でお届けします。地球環境再生の手法だけでなく、自然とともに生きる「人」に光をあてるメディアを立ち上げた背景には、登山やマウンテンバイク、バックカントリースノーボードなど、多岐に渡るアウトドアクティビティに精通した千代田さんの経験と感性故の足跡を感じることができます。

 

『「固定概念を捨てて、意識を再生しよう」「生活様式をかえて、身体を再生しよう」』

OVERVIEW COFFEE(以下OVC):イベントお疲れさまでした。特に日曜日は朝から天気がよく、本当に多くの方にコーヒーを飲んでいただくことができました。特に、<再生>というテーマで集った出店者同士で交流する機会は貴重でしたね。横のつながりが少ないと感じる分野で、これだけ多様なブランドが参加されたのは千代田さんのバックボーンがあってこそだと思います。自己紹介と、イベント開催のきっかけをお聞かせください。

千代田:大学以来の友人と二人で始めたNOMADICSという会社を10年ほどやっています。アウトドアギアの販売や、輸入代理元業務、アウトドア・スポーツイベントの企画・運営を本業としています。そういう意味では、直接的に環境保全活動をしているわけではありません。

イベント開催のきっかけですが、まずはコロナ渦で人の動きが制限された2020年に、自分自身も巣ごもり生活をするなかで、家庭でコンポストを始めてみたり、ペットボトルをやめて炭酸水を作ったり、身の回りのことに目を向けるきっかけができました。コロナ以前は仕事で移動する機会が多かったので、思い返してもコロナによる変化は大きかったですね。

同時期に、アメリカの環境保護活動家で「ドローダウン -地球温暖化を逆転させる100の方法-」を執筆したポール・ホーケン(※)のスピーチから受けた影響はかなり大きかったです。そのスピーチでは、地球の未来を考えるとすでに現状維持では不十分で、温暖化を逆転させる必要がある、と。つまり、”Sustinable”から ”Regenerative”に移行する必要がある。その上で、まずは人の意識の再生や、”well-being”を向上させることが重要である、と言った内容でした。

年齢的にも新しい表現をしたという気持ちになって、ポジティブなアクションに変えたいという意識が高まった結果、2021年に0回目という位置付けで(re)generate!を開催しました。

※ ポール・ホーケン アメリカの環境保護活動家、起業家、作家。複数の環境ビジネスを立ち上げ、自然資本研究所(NCI)を設立し、生活システム、経済開発、産業生態学、環境政策に関する執筆や提言を積極的に行ってきた。2014年、地球温暖化を逆転させる方法を調査する非営利団地Project Drewdownを設立。

 

OVC:ご来場いただいた方々が野外で気持ちよく過ごしていた印象はもちろんですが、出店者や主催者が一番楽しんでいた感じがしますね。イベントのコンセプトや、<再生>というキーワードに行き着いた経緯は何でしたか?

日本の文化や昔の道具を再生したいという想いから自分たちでブランドを立ち上げたり、回収した古着から再度糸を作って100%再生ポリエステルの服を作ったりしてきました。あとはイギリスのシューズブランド Vivobarefootの輸入代理業をはじめたことが大きな転機でしたね!B Corpも取得しているブランドで、背景を勉強しているうちに、<再生>というキーワードへの意識が明確化しました。

(re)generate!をやりたいと社内のメンバーに切り出した時には色んな意見がでたんですね。環境についての専門家じゃない自分たちがやる意義とか、勉強しないと旗はふれないのか、とか。最終的には自分たちも一緒に考えて実践するってことを姿勢にしようとなりました。まぁ、楽しそうだからやろうか!ってところも大きいですが。

『「固定概念を捨てて、意識を再生しよう」「生活様式をかえて、身体を再生しよう」』が(re)generate!のパンチラインなんですけど、コロナ渦の閉塞感だったり、これまでの取り組みが重なっていきました。自然派でも活動家でもない自分たちだから、楽しさを大切にしながら、分野の違うゲストを招いて共に考えるイベントにしています。自然農のような学びが深まる内容から、明日から実践できる家庭でのコンポストまで、幅広いテーマを設定しました。

 株式会社NOMADICS:一番右が千代田高史さん

 

社員全員がスーパーで野菜を買わなくても暮らせる生産量にしていく

OVC:確かに、環境の専門家じゃないのに発言する難しさはありますよね。それでも、自分たちは何をやっているのか、態度を発信することは大事ですよね。本業のアウトドアアクティビテだったり、自然に接しているなかで、環境の変化や危機意識を感じることはありますか?

 
今年は雪が多かったから、ありがとうございます!って感じだったんですけど、そうじゃない過去2〜3シーズンは1月にスキー場に行っても全然雪がないと心配になりますよね。あとは異常気象からの台風が増えて、自分がマウンテンバイクに乗ってダートを走ってると、路面がごっそり落ち込んでて先に進めないこともあるから、そんな場面から変化を感じることはあります。

ただ、峠道の土砂崩れを防ぎたいから、アクションとして(re)generate!をはじめたと言うよりは、それ以上に山にいることが気持ち良かったり、「この景色最高!」って言う体験を身近にしているので、課題を解決したいっていう気持ち以上に、美しいものを守りたいっていう意識の方が勝っていると思います。大自然の美しさって刹那的に感じ入るものがあるんですよね。


OVC:コンポストやペットボトルをやめるなど、日常の変化からはじまってそれがイベント開催につながっていったと伺いました。アクティビティから感じる変化も千代田さんらしいエピソードですね。ここまでは個人的な経緯を中心にお聞きしましたが、<再生>について会社で取り組まれていることはありますか?個人の積み重ねの大切さと同時に、事業を変化させることで起こる影響は大きいように思います。OVERVIEW COFFEEは<リジェネラティブ>そのものをグランドデザインとしていますが、NOMADICSとして実践していることをお聞かせください。

 
アウトドア用品のEC事業をやっているので、埼玉県に倉庫をもっていて自社でロジスティクスをまかなっています。拠点があるので、そこでリペアサービスまでできるように整えています。自分たちが売ったものは修理まで自分たちでできる体制にすることを目標にしています。特に、さっきも話しにあがったVivobarefootは本国側でのサービスとして、すり減ったソールを張り替えたり、子どものシューズをサブスクリプションサービスとして回収・再利用する取り組みもあります。技術的なハードルはあるんですが、拠点と自社のロジスティクスがあるからこそ実現可能だと考えています。

あとは、これも拠点に関連する話なんですが、倉庫に併設して会社で自然農の畑をやっているんです。会社のメンバーがストレスで調子を崩した時期がありまして、そこから回復するために土を触り始めたことがきっかけでした。最初はビニールを張って普通の畑をやっていたんですけど、ちょうど同じ時期にVivobarefootの取り扱いがはじまりました。Vivobarefootというブランドもリジェネラティブがコンセプトにあるんですが、調べていくうちにリジェネラティブってつまり「耕さない」ってことに結びついて、自社の畑も自然農に切り替えることにしたんですね。途中から雑草も抜かずそのままにしたんです。1年目は上手くいったんですけど、2年目は全然収穫できなくて、あとは近所のおばあちゃんが気を利かせて雑草抜いてくれちゃうこともあるからそんなこととも戦って、まだ試行錯誤ですけど少しずつ手応えがでてきたところです。目標としては社員全員がスーパーで野菜を買わなくても暮らせる生産量にしていくことです。メンバーと一緒に手を動かしていると話が弾むし、場所にも愛着がでてくるんですよ。さらに、今は家族も迎えて泊まれる場所にしようとなって、ウッドデッキを作ったり、オフグリッドのトイレやシャワーを設置する準備をすすめています。そうやってコミュニケーションが広がっていくこと、それ自体に価値があることだと感じています。
 

畑で手を動かしたり、場所から発展するというエピソードも千代田さんらしいですね。物理的には可能なサービスでも、ロジスティクスにうまくはまらないと持続できないという課題感はすごく理解します。OVERVIEW COFFEEで言えば、良い生産者さんがいたとしても輸送を整えないと、日常的に飲める価格でコーヒーを提供できないですし、コンポスタブルバッグに切り替えても回収から堆肥化には同じ課題があります。ただ、技術的にできないことではないので、まずはやってみることが大事ですね。<再生>というキーワード自体が懐の深い言葉なので、個々人やブランドごとに最適解を探し続けることが重要だと感じています。また来年の開催も楽しみにしています。どうもありがとうございました!