100%リサイクル可能なバッグを選ぶ理由

100%リサイクル可能なバッグを選ぶ理由

コーヒー愛飲家は世界中に広がり続け、カフェ・コーヒーカルチャーは各国独自の発展をとげています。しかし、私たちを含めた愛飲家の多くはコーヒー農園から遠く離れた地域に暮らしているため、素材の現地調達が出来ないことがほとんどです。「コーヒーを通じた環境負荷低減」を消費者の観点から捉えると、主に二つの要素が考えられます。

一つはどのような素材を選んで飲むか。OVERVIEW COFFEEは農法の見直しに解決策があると考えています。具体的には、リジェネラティブ・オーガニック農法を推進することです。土壌の健康状態を改善することは、大気中の二酸化炭素を地中に固定することを可能とします。生産国から遠い地域に暮らす消費者として、日常のコーヒーを選ぶ基準に「農法」を加えることが重要だと考えます。もちろん、美味しさは同じくらい重要です。

もう一つは消費国側で取ることができるアクションです。具体的にはゴミを減らすことや、資源を循環させることです。例えば、コーヒー豆を梱包するためのパッケージです。私たちは「環境負荷を低減し、循環を生みやすいパッケージとは何か」を考える必要があります。今回は、農園と消費者の中間に位置するコーヒーロースターとして、どのような背景からパッケージを選定したのかお伝えします。

 

私たちの判定基準

私たちの目標は、排出量を完全に相殺し、自然への害よりも良い影響を与えるビジネスを運営することです。現時点では、物理的な商品を売っているビジネスとしてやむを得ず「最も害が少ない」選択を強いられることが多いのが実情です。パッケージに関しては、技術的な問題や、消費者や企業の環境意識、使用後の循環サイクル、製造ロットなどが課題に挙げられます。

入手可能な素材の中で実用的なパッケージを完成させるために、私たちは3つの要素を重視しました。

1. コーヒーの鮮度保持
ー 優れたパッケージは気密性があり、保管するなかで鮮度が失われることはありません。ジップ式の開け口や、余分なガスを逃すためのバルブも重要です。

2. 素材の耐久性
ー コーヒーは全国に出荷されるため、長旅の間に受ける衝撃に耐えられるバッグが必要です。

3. デザインの美しさ
ー コーヒー生産者や、地球環境、そしてコーヒー愛飲家のことを想うと、美しい土壌から生まれたコーヒーは、美しいバッグに入れて届けたいと考えています。

 


機能するパッケージを作る4つの構成要素

繊細な味わいや、産地の個性を楽しむコーヒーにとって風味の保持は特に重要です。しっかりと鮮度を保つためには、主に4つの要素から構成されています。

1.  内装が食品用の素材を使用しているバリア材
2.  外装
3.  ジップ式・ワイヤー式の開け口
4.  一方向酸素バルブ

バリア材は気密性を保つうえで重要で、アルミが使用されるケースが多いです。外装を美しくするためには紙やステッカーなど、別の素材を張り合わせる必要があります。使い易さと鮮度保持という点で、プラスチック性の開け口やバルブは機能性を高めます。このように、単に機能的なパッケージは複数の素材を重ね合わせることで出来ています。

 

 

堆肥化可能か、リサイクル可能か

それでは、機能性は損なわず、環境負荷を低減するにはどのような方法があるのか。最終的に二つの方法を検討しました。

A. 100%商業的に堆肥化可能なPLA
B. 100%リサイクル可能 #4LDPE


100%商業的に堆肥化可能なPLA

AのPLAはポリ乳酸、もしくはポリラクチドの略です。これは再生可能なバイオマス(多くはトウモロコシ、キャッサバ、サトウキビ、ビートパルプなどの発酵植物澱粉)に由来するポリエステルです。

植物由来の素材で、焼却時のCO2排出量が少ないという意味で良いですが、実用化の道は遠いです。現在PLAプラスチックは商業用堆肥化施設でしか適切に堆肥化することができず、まだ廃棄物削減へ向けた実行可能な策として確立されていません。つまり、自宅に大量の堆肥の山がない限り、適切に処理するためには商業施設へ送るしかないのです。そのため、「堆肥化可能」または「生分解性」のラベルが付いた包装は誤解を招きます。企業の姿勢改善や消費者への教育という点での有用性はありますが、回収から循環というサイクルが整っていない現状では課題が多いです。

PLAのもう一つの問題は、消費者が堆肥化できないプラスチックと混同してしまう可能性を含むことです。上記の通り、コーヒーバッグは鮮度を高く保持するために複数の素材で構成されています。各パーツをハサミで切り分けて分別しなければ、再利用不能な素材として扱われる可能性があります。


100%リサイクル可能 #4LDPE

Bの#4LDPE(低密度ポリエチレン)は未使用のプラスチックです。つまり石油由来の素材であることを意味します。一般的にプラスチックは環境にとって悪であり、負荷の高い敵とされています。プラスチックが初めてこの世に生まれた時、どれほど奇跡的な発明だったでしょうか…透明で、密閉度が高く、軽量で、商品を新鮮に保つことができる衛生的な素材です。しかし、石油資源は有限であり、マイクロプラスチック問題のような課題があります。ではなぜ、私たちがそれでも#LDPEを検討しているのか。

まず、プラスチックをリサイクルする施設はまだ完璧とは言い難いですが、アメリカの場合はPLAのような堆肥化可能な代替品の処理よりも遥かに洗練されており、広く利用が可能になっています。PLAの袋が適切に堆肥化される可能性より、#4LDPEのビニール袋がリサイクルされる可能性の方が高いと捉えています。

その他の利点は耐久性と均一性です。パッケージを作る全ての物質が同じプラスチックでできているため、リサイクル時に追加作業が増えることがありません。多くの「堆肥化可能」なコーヒー袋にはワイヤーやバルブがあり、処理される前に取り外す必要があるため追加作業が発生してしまいます。

そのため、最終的には、100%リサイクル可能な#4LDPEのプラスチックコーヒーバッグを使用しています。これは、私たちがより良い策を探すことを諦めたというわけではありません。生分解性素材を否定し、プラスチックを肯定するものでもありません。プラスチック自体が有限であり、環境負荷の高い素材であることに代わりはないのです。現状の選択肢において、環境にとってより良い影響となる活動をすることが私たちの使命です。

 

ローカライズの重要性

既存のパッケージはアメリカと日本で共同利用しています。リサイクルがしやすいように単一素材にしているという点で、国が違っても使い易いという利点があります。一方で、処理環境は国によって異なり、日本国内でも自治体によって様々です。日本のプラスチックリサイクル率は85%を超えると公表されていますが、うち60%は焼却によってエネルギー活用する「サーマルリサイクル」で、OECDの基準ではリサイクルに含まれません。新たなプラスチック製品を作る「マテリアルリサイクル」や、化学原料に変換する「ケミカルリサイクル」は20%程度にしかすぎません。単一素材で脱プラスチックに移行することが日本の場合は重要であると考えます。

パッケージ以外のローカライズは順次進めています。パッケージ裏面には産地情報を表示するラベルを貼っています。ステッカー自体は紙材なので、分別し易いように弱粘性のラベルを使用しています。また、オンラインオーダーの配送ボックスは、チョコレート製造時に出たカカオハスクを紙の原料に配合した再生紙とステッカーのみ使用しています。

業務用のコーヒーバッグは生分解性素材に移行し、使用後の回収から循環のサイクルを準備しています。これについては改めて皆さんにご報告をします。

パートナーとして一緒に取り組みたい方、私たちの活動に興味のある店舗・企業の方はお気軽にメッセージをください!より良いアイデアや、新しい梱包資材に詳しい方からのアドバイスも募集しています。

問い合わせ先:info@overviewcoffee.jp