EARTHRISE Vol.3 - ペルー

EARTHRISE Vol.3 - ペルー

四季のコーヒー <EARTHRISE>

グリーンのパッケージEARTHRISE(アースライズ)は、四季(夏至・冬至・春分・秋分)ごとに変化する季節限定のコーヒーです。EARTHRISEを日本語訳すると<地球の出>ですが、1968年12月24日に宇宙飛行士のウィリアム・アンダースが、アポロ8号のミッション中に撮影した地球の写真を指します。ハッセルブラッド社のカメラで撮影されたこの写真は「史上最も影響力のあった環境写真」として知られています。

コーヒーは赤道を中心に南北25度が栽培に適していますが、大陸によって表現される味わいは大きく異なります。このEARTHRISEというパッケージは、特定の産地に絞らず大陸を横断し、季節ごとに、コーヒーの多様さを表現しています。また、小規模生産者に焦点を当て、彼ら彼女らの農園での土壌の健康を促進する活動を支援しています。 

 

ペルーの生産者 <アプロカシ農協>

Vol.3となる今回は南米・ペルーで自然環境に配慮し、上質なコーヒーを生産している協同組合<Aprocassi(アプロカシ)>が生産するコーヒーです。アプロカシ農協はペルー北部のカハマルカ州のサンイグナシオ地区と、ハエン地区で活動しています。1999年に、鉱山採掘による環境破壊に対抗するため、サンイグナシオの住民が結成した団体がルーツです。翌年2000年にコーヒーの生産組合として活動を開始しました。この地域のリーダーであるLuis Peñaを中心に、農場の技術支援や、ソーシャルプロジェクトの開発、オフィスや倉庫の購入をすすめてきました。

今回、OVERVIEW COFFEEはアプロカシ農協に所属する生産者である、ファン・マンチャイ・サントス一家によるロットをセレクトしました。土地の気象条件に合わせて品種の植え替えや、グリーンハウスの設置、アフリカンベッドを使用した乾燥など、品質向上に注力しています。また、この栽培期間中の化学農薬・化学肥料は不使用です。

生産国:ペルー
エリア:San Pedro, San Ignacio, Cajamarca
生産者:Aprocassi Cooperative
品種:Yellow Caturra, Red Bourbon, Mundo Novo
精製方法:Washed
標高:1950m

◻︎キウイやルバーブジャムのような果実味
◻︎お砂糖を入れた紅茶のような口当たり

 

 

混乱を超えて

ペルーでは、NGOによって生産地が整備されてきた背景があり、輸出される多くのコーヒーはフェアトレード認証をうけています。また、有機栽培の文化が根強いことも特徴で、この数年で日本国内でも、マイクロロースターを中心に目にする機会が増えている印象をもつ産地です。ペルーは北にコロンビア、東にブラジルという世界有数のコーヒー生産国の隣に位置しているせいか目立たない印象がありますが、2020年の生産量では世界第6位を誇ります。南米では、先に挙げたブラジル、コロンビアに次ぐ第三国という位置付けとなります。そしてこれだけの収量ながら、全体のおよそ90%が小規模農園によって生産されていることも興味深く、そこには政治的な混乱を乗り越えてきた背景があります。

ペルーは、太平洋沿岸部では漁業を中心とし、北東部はアマゾン盆地を抱え、北部から南部にかけての高地で栽培されており、多様な自然環境を持っています。また、人口の1/3が首都のリマに集中し、都市と地方、所得格差という不均衡さを長く抱えてきています。これは農地でも同様で、歴史的に見ても1%の大地主が全体の70%近くの土地を所有し、大多数の小規模農家が全体の10%足らずの土地を分け合っていました。1970年代、フアン・ベラスコ政権は、地域的な不均衡を改善しようと、国有化や農地の統合による政策を推進し、農業改革によって国内市場を活性化させていきました。これにより、大地主による伝統的な権力は低下し、小規模農家による協同組合経営が台頭しました。当初は南米において急進的な政策と注目を集めましたが、組合の恒久的な資金難による設備投資の不足や、沿岸部では気候変動や乱獲によるいわしの不漁のほか、不安定な原料輸出が膨大な赤字をうみました。その後、ゲリラ活動によって混乱は拡大し、作物は荒らされ、農民は農園から追いやられました。

情勢が回復した現在でも、小規模農家や協同組合による生産が多くを占めます。また、NGOによる支援によってフェアトレードが普及しています。複雑な地形も相まって、未だにインフラ整備が追いつかないことが課題ですが、輸出量は増え、品質も向上しています。特にこのような地形や生産背景からは、エリアやロットによる風味の違いを楽しむ文化との愛称が良いと感じます。今回のアプロカシ農協は柔らかな甘さをベースに、キウイのような爽やかな果実味が特徴です。AFRICALATIN AMERICAとの違いは勿論ながら、ペルーという括りでコーヒーを飲み比べてもきっと楽しめるはずです。