精製方法が風味に与える影響

精製方法が風味に与える影響

3つの精製方法

焙煎によって色味がついた、褐色の液体こそが普段目にするコーヒーですが、コーヒーは果実であるという事実は案外忘れられがちです。豆粒のような形状をしていることからコーヒー豆と呼ばれていますが、実際はコーヒーの木に生る実を剥いで取り出した種子がその正体です。

今回は、コーヒーの風味に大きく影響を与える<精製方法>についてご紹介します。精製方法の違いを知ると、味わいの背景に奥行きが生まれて、コーヒーを飲む楽しさが広がります。また、文字情報から風味を想像できるようになり、コーヒー豆を選ぶときの参考になります。好みの精製方法をみつけることも醍醐味のひとつです。

世界のコーヒー産地は赤道を中心に南北25度の範囲で、年間を通じて温暖な地域で主に生産されています。特に、スペシャルティコーヒーについては標高の高いエリアで栽培されていることが多く、これは豊かな風味をもつアラビカ種が1000m以上の熱帯高地での栽培に適していることが主な理由です。また、一日の寒暖差がある高地はコーヒーチェリーの糖度をあげ、風味の豊かさを高めます。

コーヒーの原種はエチオピアと言われており、その多くが未だに有機栽培(自生)です。人間の移動と共に世界中の熱帯地域に広がり、適応や突然変異、品種改良によって各地域に適した品種が生産されています。コーヒーが持つ風味は、品種・土壌・標高・局地的な気候などの掛け合わせによって無限に広がり、まさにその土地特有の味わいと言えるでしょう。

品種や環境以外に味わいを構成する要素として<精製方法>があります。精製は収穫と脱穀の間のプロセスを指し、種子についた果肉をどのように剥いで、発酵、そして乾燥させるかによって風味が異なります。精製方法は大きくわけて3つあり、ひとつはウォッシュド(水洗式)、もうひとつはナチュラル(乾燥式)、そしてハニープロセスです。

 

<ナチュラルプロセス> 果肉がついたまま乾燥させた状態 

 

ウォッシュドプロセス

<ウォッシュドプロセス>はコーヒーチェリーを収穫した後に、パルプと呼ばれる果肉を機械で取り除きます。この段階では種子は、ミューシレージと呼ばれる粘膜に覆われているので、このミューシレージを取り除く必要があります。ミューシレージは糖分を多く含み、しっかりと落とさないと腐敗する心配があるため、種子を貯水タンクに入れ発酵によって成分を分解します。適切な発酵を終えた後に、きれいな水でしっかりと洗い流す必要があり、この工程からウォッシュドと呼ばれています。

水洗する工程は発酵による個体差を均質にするほかに、欠点豆の選別がしやすく高い品質を安定して保つことが可能です。ウォッシュドプロセスのコーヒーを実際に飲むと、風味には透明感があり、瑞々しい果実味を感じることができます。精製方法由来の風味が生じにくいため、今回紹介する3つの精製方法の中で、産地や品種の特性をもっとも味わいやすいプロセスです。

多くの生産地にとって水は貴重な資源です。使用後の水は濾過して再利用するなどの取り組みが増えてきています。また、除去されたパルプは堆肥として活用されています。乾燥工程に時間をかけることのできない高温多湿のエリアや、雨量の多い地域、水源へのアクセスが良いエリアには利点のあるプロセスと言えます。

 

ナチュラルプロセス

たくさんの水を使用するウォッシュドプロセスに対し、果実をそのまま乾燥させる精製方法を<ナチュラルプロセス>と呼びます。工程はシンプルで収穫したチェリーを果実がついた状態で、そのままアスファルトや通気性のよいベッドの上で乾燥させます。乾燥によって果実に含まれる水分量が減り、完全に乾燥した後に脱穀して生豆を取り出します。

この製法はプロセス由来の独特な香りや風味を生み出します。焙煎し、コーヒー豆を挽いた瞬間にトロピカルフルーツのような香りが広がり、実際に飲むとストロベリーやパイナップルなど、甘さが強く、明るい果実味が広がります。

ブラジルのような広い敷地をもった乾燥地域や、エチオピアのような乾燥して、かつ使える水が限られた地域で取り入れられる精製方法です。反面、発酵・乾燥プロセスに個体差が生じやすく、欠点豆の選別が難しいことから、均質性を保つための生産管理が課題となります。

 

ハニープロセス

最後の<ハニープロセス>は、ウォッシュドとナチュラルをかけあわせたような精製方法で、パルプを除去した後にミューシレージを残したまま乾燥させます。そのため、パルプドナチュラルとも呼ばれます。

発酵の具合によって味わいがかわり、比較的穏やかなものはアカシアのような蜂蜜の風味をもち、発酵が進むほどにナチュラルプロセスに近いベリーのような味わいとなります。また、パルプを残す割合によって糖度や風味をコントロールすることが可能です。

このプロセスは中米エリア、特にコスタリカ産のコーヒーで目にする頻度が高いです。 

 

 

パッケージの背面やオンラインストアの商品ページには、必ず精製方法を明記しています。精製方法が風味に与える影響は大きく、購入時の参考になります。

例えば、エチオピア産のコーヒーは、ウォッシュドとナチュラルのどちらも多く流通しています。精製方法違いの飲み比べをしてみると、どちらが好みかわかりやすいでしょう。

現在販売している<AFRICA>はエチオピアのアリーチャで、ナチュラルプロセスのコーヒーです。こちらは9/13焙煎分で終売します。

その次の9/20焙煎からは同じくエチオピアのアリーチャですが、ウォッシュドプロセスのコーヒーをリリースする予定です。同じ原産地で同じエリア、プロセスの違いを比較するうえで良い機会となります。

どちらもお試しください。

(同時販売はしないため、予めナチュラルプロセスのアリーチャをご購入ください)