リジェネラティブ・オーガニック認証を取得したコーヒー〈SACACLI〉

リジェネラティブ・オーガニック認証を取得したコーヒー〈SACACLI〉

2020年に誕生した我々、Overview Coffeeのミッションは環境と生態系に配慮して生産されたコーヒーを通じて気候変動問題の解決に寄与することです。具体的には、リジェネラティブ・オーガニック農法を推進することが効果的なアプローチだと考えています。

2022年、中米の生産国ニカラグアで世界初となる〈リジェネラティブ・オーガニック認証〉を取得したコーヒーが生産されました。そして、リジェネラティブ・オーガニック認証を取得して2シーズン目となった2023年クロップを、今回ついにOverview Coffeeとして皆さんにお届けすることができます。

今回は生産者である〈SACACLI〉や生産国ニカラグア、リジェネラティブ・オーガニック認証についての概要をお知らせします。

 

世界で初めてリジェネラティブ・オーガニック認証を取得した団体〈SACACLI〉

2022年、アメリカを拠点とする団体〈Regenerative Organic Aliance〉がニカラグアのコーヒーに認証を与えました。これは、コーヒーというカテゴリでは世界初となりました。認定を受けた生産者はニカラグア北部のヒノテガ県サン・ラファエル・デル・エルノ州のサカクリを拠点にする農業団体〈SACACLI〉です。

SACACLIは1994年11月5日、31 名の従業員 (うち 6 名は女性) によって設立され、現在はこの協同組合には 500 人の組合員がいます。 この協同組合は、パンタズマ市の 22 人の組合員の協力を得て、2008 年にコーヒー分野での事業を開始しました。徐々に会員を増やし、フェアトレードやオーガニック認証を積極的に取得しています。

SACACLIは、土壌や環境、コミュニティの保護を保証する規制に基づいて品質の高い生産をしています。彼らは継続的なモニタリングに取り組んでおり、生産者、組織、バイヤー間でトレーサビリティを整え、サプライチェーンの品質向上を常に模索しています。現在、協同組合は貯蓄、信用、供給、トレーニング、コーヒーのマーケティング、技術支援などのサービスで中小規模の生産者をサポートしています。

サン・ラファエル・デル・エルノ州はニカラグアで一番高い街で、ハイキングやレジャーとして人気のエリアです。サカクリのコーヒーは標高900〜1250mで生産されています。単独の農園ではなく、協同組合という特性上、複数種類の品種が含まれたロットです。リジェネラティブ・オーガニック認証を取得しているほかに、フェアトレード、各国のオーガニック認証を取得しています。

みかんのような甘酸っぱさ、バターのようなコク、きび糖のような素朴な甘さの余韻が特徴です。

生産国:ニカラグア
エリア:SSacacli, San Rafael del Norte, Jinotega, Nicaragu
生産者:Cooperativa Sacacli
品種:Catimor, Catuai, Caturra, Maragogype, Marsellesa
精製方法:Washed
標高:900〜1250m
認証:ROC(Regenerative Organic Certified),Fair Trade FLO, Fair Trade USA, Organic EU-Europe, Organic NOP-USA
ローストレベル:中浅煎り

みかんのような甘酸っぱさ
バターのようなコクと、キビ糖のような素朴な甘さの余韻

 

ニカラグアの情勢と協同組合

太平洋とカリブ海に面しているニカラグアは、北にホンジュラス、南にコスタリカとコーヒー産地に面しています。他の中米諸国同様にニカラグアもコーヒー豆の生産が主な産業ですが、近隣の生産国と比べるとその印象はまだ薄いかもしれません。SACACLIがあるヒノテガ県はニカラグア国内の主要生産地です。

ニカラグアに初めてコーヒーが持ち込まれたのは1790年ですが、1840年から1940年のおよそ100年間は「コーヒーブーム」と呼ばれ、主要輸出産品として多くの資源と労働力を政府主導で注いできました。この間、大規模農園の建設を推奨し、経済政策と法整備を進めてきました。結果、19世紀末にはコーヒー輸出への依存度が高く、不安定な状態に傾いていきます。

その後、独裁政権や内戦という不安定な状態が数十年に渡って続きます。これにさらに追い打ちをかけたのが、1998 年にハリケーン ミッチがニカラグアを襲い、コーヒー インフラの大部分を流失させたということです。ハリケーンの猛攻撃に続いて干ばつが発生し、経済をさらに圧迫しました。コーヒーは国の国家発展において非常に大きな役割を果たしているため、危機の影響はすでに荒廃していた国にとって悲惨なものでした。6大国営銀行のうち3銀行が多額の負債を理由に破綻しました。価格が非常に下落したため、コーヒーを収穫するのにかかる労働力と時間は、農家の販売収益以上に高くなりました。

1990 年代から 2000 年代初頭の価格危機後のニカラグアのコーヒー産業の再建において、協同組合が重要な役割を果たしました。ニカラグアで最初に協同組合が発足したのは1900年代初頭で、その後徐々に拡大していきました。1980年代以降は土地が再配分され、協同組合はそれまで土地を持たなかった農場労働者に土地を再分配するよう指示していきます。

同時期に、フェアトレードやオーガニックコーヒー認証の最初の波が始まり、需要の増加が起こります。多くの協同組合は、倫理的貿易認証による支援を得たり、土地所有権を確保したりすることで、経済危機の中でも存続することができました。そして、組合員が技術支援や新興のスペシャルティコーヒー市場にアクセスできるよう支援する上で重要な役割を果たしました。

1990 年代から現在に至るまで、ニカラグアに残っている協同組合は規模と範囲の両方で拡大しました。専門市場が成熟するにつれて、これらの協同組合の多くは、新しい加工インフラの構築、トレーニングの提供、強力な品質保証プログラムの作成、組合員をサポートするフルタイムの協同組合スタッフの訓練を通じて、農家が変化するコーヒー分野を乗り切ることを支援してきました。協同組合は純粋にコーヒーの品質と価格を向上させることを超えて成長し、現在では利益と付加価値を活用してより広範囲なコミュニティの改善を実施することに重点を置いています。

SACACLI は 2020年に ROC 認証プロセスを開始し、まず ROC 認証バナナの販売を開始したことで認証への扉を開きました。コーヒーの認証プロセスには約11か月かかりましたが、その間、英語力や生産者全員がオーガニック認証を受けているわけではないなどの課題に直面しました。しかし、彼らはプロセスを続行することを決定し、85人の従業員のうちオーガニック認定を受けた 41人が監査プロセスを経て認証を取得しました。 

認証にはブロンズからゴールドまで3段階あり、2021年に彼らはブロンズ レベルの認証を取得しましたが、土壌分析、二酸化炭素排出量回収プロジェクト、森林と鳥類の調査を通じて実践を改善する方法を模索し続けました。2022年の監査後、彼らはシルバーレベルに到達し、51人の従業員がすでにオーガニック認定を受けており、18人が認定手続き中です。今後数年間でゴールド レベルに到達することを目標としています。

 

リジェネラティブ・オーガニック認証とは

リジェネラティブ・オーガニック認証機関であるリジェネラティブ・オーガニック・アライアンス(ROA)は2017年に設立されました。この認証は「土壌の健康」「動物福祉」「社会的公平性」の3要素を重視し、生産環境を定量的に評価しています。

まず、従来型の慣行農法の特徴として農薬の使用が挙げられます。安定的な生産体制を構築する上で必要とされる反面、化学肥料による土壌汚染や生態系の破壊、生産者の人体に悪影響があります。また、温室効果ガスを排出し、地球温暖化への影響が指摘されています。対して有機農法は化学的に合成された肥料・農薬、遺伝子組み換え技術を使用せず、環境負荷の低減を重視しています。生態系や生物多様性、そして生産者の健康面に配慮され、持続可能な農業形態とされています。

アメリカでは農務省が設定した基準をクリアするとUSDAオーガニックの認証マークを商品にラベル付けすることが許可されます。作物が有機認定される前に、少なくとも 3 年間は土地にすべての禁止物質が存在しない必要があり、年間 5,000 ドル以上のオーガニック製品を販売する農家および食品加工業者が対象となります。対象は農作物、家畜、加工品、野生採取された植物と認証範囲が広く、定期的な検査によって品質を保持します。日本では有機JASマークが同様の役割を担っています。

食品の安全面を重視するオーガニック(有機農法)に対し、リジェネラティブ・オーガニック(再生型有機農法)は「土壌の健康」を最優先事項としています。化学肥料や農薬、GMOの不使用は有機農法同様ですが、さらにカバークロップの推進や輪作、最小限の土壌撹乱、回転放牧など、農業や生産活動を通じて土壌を回復させることを定義に組み込んでいます。土壌の撹乱を抑止することは温室効果ガスの排出を抑えるほか、カバークロップや輪作によって植物を通じて大気中の二酸化炭素を取り込む効果があります。そのため、リジェネラティブ・オーガニック農法は地球環境の再生のために不可欠だとされ、Overview Coffeeでも推進をしています。

また、「動物福祉」では苦痛や飢餓、恐怖からの開放や牧草飼育を重視しています。「社会的公平性」では、生産者への公平な支払いや、良好な労働環境、生活賃金の確保などを重視しています。

現在のペースで進むと世界の表土は60年後に枯渇し、気候危機に起因する温室効果ガスの排出量の最大25%が従来の工業的農業によることが指摘されています。この状況では「持続可能性」ではすでに遅く、「再生」を追求することが必須となります。


LATIN AMERICAとしてリリース

ニカラグアは古くからオーガニックでの生産を主としていましたが、その理由は農薬を購入する資金がなかったことが強いとされています。地球規模での環境や需要の変化によってニカラグアの農園に関心が集まっている、と言うほど単純な問題ではなく、それこそ都合の良い解釈になるでしょう。すべての認証にはお金がかかり、サプライチェーンのバックアップによって成り立っている側面も大きいです。ですが、このムーブメントが生産者にとって金銭的なメリットになり、認証によって生態系や労働環境を改善していくためには、消費国側で価値づけしていく必要があると考えます。

Overview Coffeeでは今回のコーヒーSACACLIを〈LATIN AMERICA〉のパッケージとして販売をします。本日よりオンラインでの販売をスタートし、早ければ1/25からはパートナーのカフェやレストランでも提供を開始します。ご自宅やお近くのカフェで、ぜひ記念すべき第一歩目となるこのコーヒーを楽しんでください。

また、私たちと共にコーヒーを通じて環境の再生に寄与したいというパートナーを歓迎しています。コーヒーの特徴から、お店で美味しいコーヒーを提供するためのバックアップまで、Overview Coffeeチームがサポートします。もちろん、今回リリースするSACACLIをご利用いただくことも可能です。「お問い合わせ」ページからお気軽にメッセージをください。