トークイベント〈MOONRISE〉

トークイベント〈MOONRISE〉

ゼロ・ウェイストタウン徳島県上勝町を拠点とするブリュワリー〈RISE & WIN BREWING CO.〉と、OVERVIEW COFFEEがコラボレーションし、コーヒービール〈MOONRISE〉をリリースしました。このビールは、〈LATIN AMERICA〉として提供しているホンジュラスの生産者・COMSAのコーヒーを使用したアンバーエールで、ナッツキャンディのような甘さや、軽やかな喉越しがあります。

今回の記事では、発売を記念して開催したトークイベントの内容を編集し、コラボレーションの背景や、味わいの解説、そして両ブランドの取り組みについてご紹介します。

 

 

 

〈OVERVIEW COFFEE JAPAN〉代表 増田啓輔

OVERVIEW COFFEE JAPAN代表の増田です。瀬戸田を拠点に、日本のブランドディレクション、焙煎とクオリティコントロールを主に担っています。

今回、一緒にビールを作った背景として、遡ると日本の焙煎所は2021年4月に開業したんですが、それ以前に視察も兼ねて上勝町の宿泊施設WHYに訪れました。その時に〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター〉や〈RISE & WIN BREWING CO.〉の方々と交流が生まれて、一緒にリジェネラティブな取組としてコーヒービールが作れたらいいなという話で盛り上がりました。

OVERVIEW COFFEEとしては、日常で飲むコーヒーが美味しくて、その素材が環境に負荷が低く生産されている。選んだコーヒーが結果的に環境の改善に寄与することを大切にしています。KAMIKATZ BEERで言うと、美味しいビールを飲んだら結果的に環境にもプラスになるという点にとても共感しています。どちらも、楽しく伝えるという共通点があり、やっとコラボレーションビールを完成させることができました。

今回は〈LATIN AMERICA〉というパッケージで使っている、ホンジュラスのCOMSAという生産者のコーヒーを選びました。リジェネラティブオーガニックを推進している団体で、最もOVERVIEW COFFEEらしく、そして今回のコンセプトをしっかりと表現できると考えたからです。コーヒーの風味としては、ナッツキャンディのような甘さや、ストーンフルーツの果実感がありますが、ビールに調和していると感じます。

ビールには〈MOONRISE〉と名づけました。OVERVIEW COFFEEのロゴは〈EARTHRISE〉と言って、日本語では〈地球の出〉と呼ばれます。有人宇宙船として、初めて月を周回したのがアポロ8号ですが、その時に撮影された地球の写真がロゴのモチーフになっています。宇宙から地球を眺めるとひとつの球体として捉えることができて、世界観や概念が一変してしまう、そのことをオーバービューエフェクト(概観効果)と呼びます。

今回のコーヒービールは飲む時間をあまり限定せずに、夜に限らず夕方にもちょうどいいバランスにしました。アースライズのようなスケールではなく、かと言ってサンライズほど馴染みのない、ムーンライズが味わい的にも、距離感的にもちょうど良いと思って名づけました。

 

 

 

〈RISE & WIN BREWING CO.〉ヘッドブリュワー 引田佑介

RISE & WIN BREWING CO.〉でヘッドブリュワーをしている引田です。上勝にはふたつの生産工場がありますが、その両方で醸造からパッケージングまでの流れを管理しています。今回は、OVERVIEW COFFEEの増田さんと一緒にやり取りをしながら、ビールの方向性を決めてレシピ化していきました。

今回使用したコーヒーの風味を理解しながら、どうやってビールに取り入れてバランスを取るかについてはかなり試行錯誤しました。過去に何度か作ったコーヒービールのレシピをベースに、最初の試作をした時は全く上手く行かず、かなり悩むところからスタートしています。コーヒーの挽き目を調整したり、抽出時間を変えながら、段々と良い方向が見えてきて、最終的にお互いが納得のいく味わいを表現することができました。

ビールのスタイルとしては、アンバーエールと言って明るい赤茶色のビールで、ビターさとカラメル化したような甘さが特徴です。上勝のペールエールをベースにしながらアレンジをしました。コーヒーが持つ風味が調和しています。

 

 

 

〈RISE & WIN BREWING CO.〉代表 田中達也

徳島県、四国の徳島県上勝町を拠点に活動している〈RISE & WIN BREWING CO.〉代表の田中です。2011年から町との関係がはじまって、ブリュワリー自体は2015年に立ち上がりました。上勝町は2003年に、日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言をした自治体で、ゴミ収集がなく、町民自らゴミステーションにゴミを持ち込んで分別しています。

できるだけ細かく分別し、今では45種類に分別をしています。20年かけて、いまでは町内のリサイクル率が80%を超えました。全国の自治体のリサイクル率が20%くらいなので、上勝の数字は相当高いですが、これだけ徹底して分別をしても20%は残ってしまいます。裏を返すと、ゴミゼロを目指してもゼロにはならなかったということです。ここから更にリサイクル率を上げるには、国や企業らとの取組を加速させる必要があります。

今でこそ、環境に配慮した動きがありますが、ゼロ・ウェイスト宣言をした当時は経済優先の社会で、ゴミゼロと経済をどう両立するのかという質問が多かったです。環境について自分ごと化する意識が低く、どうやって自然と生活の中に取り入れられるかを考えた時に、楽しみの延長に環境があればポジティブな作用が生まれると考えて、その結果としてブリュワリーを作るという動きになりました。

自分たちで出来ることを足元から考えてみると、循環させることができるものとして、例えばモルトカスがあります。一度の醸造で5600kgのカスが生まれますが、地域性もあって近隣の農家さんに堆肥用として引き取ってもらっています。ただし、高齢化が進んでいるので引き取りをいつまで続けることができるかはわからないです。この循環も、自分たち自身で解決策をつくる必要がありました。

そこでたどり着いたのが〈reRise〉という仕組みで、廃棄物を微生物の力で発酵液に変えて、液体肥料として町内の畑に撒きます。そこで麦を育てて、収穫した麦でビールをもう一度作ると、完全にサーキュラーなかたちになりました。まだ少量ですが、去年の10月にリライズとしてリリースできたので、循環型の第一歩となりました。

ゼロ・ウェイストと経済の両立は難しいのではないかという質問は今でも聞かれますが、これはRISE & WINがやりはじめたのではなく、町の方針としてはじまったことです。なぜかというと、町の存続に関わっているからです。今、上勝町の人口は1430人ほどです。どんどん減り続けていて、1000人を下回ると町を維持できないと言われています。そのひとつとして焼却炉を作ることができなかったので、リサイクルを進める方針になりました。同じように、産業が失われると働き口がなく、住む人が減ってしまい、町の魅力はさらに失われる。そうなっては町が存続しないので、経済との両立を考える以前に、町の存続を最優先に出来ることを試行錯誤しています。

今では、若い層を中心に上勝町に関心を持つ方が増えて、新たな循環が生まれています。ゼロ・ウェイストという文脈で町の存在に気づいてもらい、注目されることで先に進むことができます。その意味で、町の課題と我々の事業性はすごく似ているところからスタートしています。

 

 

〈RISE & WIN BREWING CO.〉

徳島県、四国の徳島県上勝町を拠点に活動しているブルワリー。上勝町は四国でもっとも人口の少ない町として知られる一方、2003年に自治体として日本で初めて〈ゼロ・ウェイスト宣言〉を行ったことで世界から注目を集めている。上勝町が掲げるゼロ・ウェイストの活動に共感し、町の未来とともにある小さなブルワリーとして2015年5月に開業。ビールを通じてゼロ・ウェイストを体現し、過剰にとれた果実や絞った後の皮を使用するほか、乳酸菌発酵の上勝晩茶を取り入れるなど、地域性も重視している。現在、ビール醸造の過程で生まれるモルトかすを微生物で分解し、廃液ともどもビール原料由来の液体肥料にする取り組みを進めている。

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