トリガリート農園とクスカトレコ種
EARTHRISE | Finca El Trigalito, El Salvador
グリーンのパッケージEARTHRISE(アースライズ)は特定の産地に絞らず大陸を横断し、皆さんに届けたいユニークなコーヒーや生産者、背景のあるマイクロロットの素材を選定し、コーヒーの多様性を表現します。
Overview Coffeeでは創業以来、リジェネラティブ・オーガニック農法の推進によって地球温暖化問題への寄与をミッションに掲げています。リジェネラティブ・オーガニック農法を実践する生産者や同認証を取得する団体、オーガニック認証やレインフォレスト・アライアンスなど環境負荷低減に対する客観的指標を素材の選定基準にしています。同時に、小規模生産者にとって「認証」の取得はハードルが高いことは事実です。環境負荷低減という軸はかえず、届けるべき背景のあるコーヒーを紹介していくことも大切にしています。
今回のEARTHRISEは中米エルサルバドルの北部に位置するチャラテナンゴ県にあるトリガリート農園のコーヒーです。このコーヒーは、京都を拠点にする、エルサルバドルに特化したコーヒー商社・焙煎事業を行う〈COYOTE〉が架け橋となって、産地から日本に届けられています。今回はCOYOTE代表の門川さんに、エルサルバドルとの関わりや、トリガリート農園、クスカトレコという品種についてお聞きしました。コーヒーを飲みながらご覧ください。

COYOTEとチャラテナンゴ
2020年に京都で創業したCOYOTEは「生産者とコーヒーを愛するあなたを繋げる存在」という役割を担い、日本とエルサルバドルコーヒーの架け橋となるコーヒーブランドです。京都市内に実店舗と焙煎所を構えていますが、他のロースターと異なりエルサルバドルのコーヒーのみを取り扱っている点がユニークで、明確な目的意識を感じます。また、今回私たちがコーヒーを入荷したように、エル・サルバドルのチャラテナンゴ県で生産されたコーヒー生豆のインポーターという役割も持ち合わせています。
門川さんはJICAのプログラムをきっかけに、2018年10月から2020年3月まで、チャラテナンゴ県の輸出業者で仕事をした経験をもっています。このプログラムはチャラテナンゴ県のコーヒー産業発展を目的に、チャラテナンゴスペシャルティコーヒー生産者組合ACOPACAの創設者であり、自身ではサンタロサ農園のオーナーであるラウルリベラ氏のリードによってはじまりました。
中米の一大コーヒー産地として知られているグアテマラを西に、ホンジュラスを北に置き、両国同様にエルサルバドルも高品質なコーヒーを生産しています。国土は四国程度で、首都サン・サルバドルからチャラテナンゴまでは車で2時間弱という距離感です。ブルボンやパカスのほか、エル・サルバドルの研究機関によって開発されたパカマラ種発祥の国として有名です。
1970年代は世界第4位の生産量を担っていましたが、1980年から1992年まで続いた内戦により多くの犠牲者を出し、コーヒー農園も大きな被害を受けています。また、大規模なコーヒーサビ病の蔓延により収量が大幅に下がりました。このような背景と、国内の産地としては後進であったことから、チャラテナンゴはラウル リベラ氏を中心に地域ネットワークの整備と、日本市場へのアプローチのためJICAとの取り組みがはじまりました。
チャラテナンゴは国内生産量としてはわずか5%未満ながら、コーヒーの品評会Cup of Excellenceでは半数近くを占める高品質なコーヒー産地に成長しています。門川さんはチャラテナンゴでの就労経験から、COYOTEを通して特定の生産者と長期的な関係を構築をすることと、チャラテナンゴの高品質なコーヒーを日本に紹介することを理念にしています。

トリガリート農園とクスカトレコ種
このコーヒーの魅力は農園のロケーションと品種にあります。農園主のエメルソン バスケスは20代半ばの若い生産者です。現在はこの土地でコーヒーの栽培をはじめた父親と共に仕事をして世代交代をしている最中です。チャラテナンゴのなかでも奥地で生産をしていて、周囲に暮らす人は少なく、空気が澄んで自然環境が特に豊かなロケーションです。また、標高は1600mで他の産地よりも高地に位置するため朝晩の寒暖差があることが風味豊かなコーヒーを生み出しています。日中は冷涼なため乾燥工程にゆっくりと時間をかけることができるのも場所ならではの特徴です。
バスケスさんはこれまで特定の商流、エクスポーターやロースターなどのバイヤーとの付き合いがなく、毎年出来上がったコーヒーをその時々で販売していたようです。もともと現地でバスケスさんと顔見知りだった門川さんが彼のコーヒーを飲んだところ、非常に高い出来栄えで今回の買付が決まりました。
トルガリート農園の生産量は年間合計2tほどの少量です。わずかな人数と、収穫時期にはピッカーの補助によって農園の運営をしています。ユニークな点は2tのうちの半数はパカマラ種で、残りの500kgずつをゲイシャとクスカトレコが分け合います。特に、このパカマラが飛び抜けて良い出来だったと門川さんを驚かせたようです。
クスカトレコはエルサルバドル向けに改良品種されたサルチモール種の系譜です。サルチモール種自体が風味の豊かさと病気耐性の強さを目的に改良された品種であるため、クスカトレコも同様の性質を持っています。病気耐性が強く安定した収量を見込める反面、風味に物足りなさがあるケースが多く、クスカトレコもエルサルバドル国内では決して評価の高い品種ではないと見られています。
トルガリート農園のクスカトレコは華やかな香りや、質感を伴った甘さと果実味のバランスが良く、鮮やかな印象を持っています。標高1600mというエリアが持つ寒暖差が糖度を高め、一般的なクスカトレコ以上に豊かな風味を生んだのではないかと考えられます。瀬戸田で焙煎をすると、モラセスシロップを連想させる凝縮した甘さや、キウイフルーツ、アロエヨーグルトのようなユニークな風味が表現されます。抽出もしやすく、高品質なデイリーコーヒーの魅力を感じさせます。
エルサルバドルでは、ピッカーを中心とするコーヒー産業従事者の減少が大きな課題となっています。また、気候変動の影響はエル・サルバドルも例外ではなく、スペシャルティコーヒーの生産地域は変化しています。労働者数の問題や収量への懸念に対して、「品種」という観点が対策の要因になるケースは今後も増えていくのではないでしょうか。トリガリート農園のクスカトレコを飲んでいると、最適なバランスについて考えさせられます。その答えはひとつではなく、土地や環境に紐づいた問題に対して最適解を導き出すことが求められます。

Finca El Trigalito, El Salvador
生産国:エルサルバドル
エリア:チャラテナンゴ県ラパルマ
生産者:エメルソン バスケス
品種:クスカトレコ
精製方法:ウォッシュド
標高:1600m
モラセスシロップを連想させる凝縮した甘さと質感
キウイフルーツやアロエヨーグルトのようなユニークな風味
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